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エナメル塗料とは
塗料は使われている材質によりいくつかの種類に分類されます。塗料の中でも建築やホビー用など広い用途に使用されているのが「エナメル塗料」です。
エナメル塗料を簡単に説明するならば「物体に塗布できる色がつけられた樹脂」です。物体表面を樹脂でコーティングするように塗布できるので色乗りがよく優れた耐久性を発揮します。仕上がりの美しさから見栄えを重視したい外壁塗装や装飾品の仕上げなどによく用いられます。
石油系の有機溶剤をベースとした塗料
エナメル塗料は石油系の有機溶剤をベースに作られています。ラッカー系の塗料は溶剤が揮発することで塗装膜が形成されますがエナメル塗料は顔料として使用されている樹脂が空気と反応することで塗装膜が形成されるという違いがあります。
エナメル塗料は溶剤に含まれる有毒な成分が少なく安全に使える健康的な塗料ですが、表面の乾燥に時間がかかります。乾いたように見えても内側の樹脂が十分空気と反応していない状態で触ってしまうとベッタリと指紋の跡がついてしまうので注意が必要です。
油性塗料なので水洗いはできない
エナメル塗料は石油系の有機溶剤をベースとした油性塗料です。油性塗料なので水洗いで落とすことはできず取り除くにはシンナーなどの溶剤を使う必要があります。塗装作業中にエナメル塗料で手などが汚れると落とすのが大変なので注意しましょう。
ただし、空気と反応して塗装膜を形成するエナメル塗料は乾燥させてしまうと再利用ができなくなります。定着したエナメル塗料をシンナーではがすことはできますがはがした塗料を使ってもう一度塗り直す事はできません。
ラッカー塗料の上からエナメル塗料を塗ることも可能
エナメル塗料は重ね塗りに強くほとんどの塗料の上に重ね塗りが可能です。
エナメル塗料と並んで広く使用される塗料にラッカー塗料がありますが、ラッカー塗料とエナメル塗料は塗料が定着する仕組みが異なり、それぞれの特徴を活かして使い分けられています。
完全に乾いて定着しているラッカー塗料の上にエナメル塗料を塗ることも可能です。ただし、エナメル塗料の上にラッカー塗料を重ね塗りすることはできません。きちんと定着せずムラができてしまいます。
エナメル塗料の特徴
エナメル塗料の特徴を一言で表すならば「扱いやすく塗りやすい」です。
エナメル塗料の性質は塗装作業に非常に向いています。取り扱いに細かい注意が必要なく手順さえ抑えれば誰でも簡単に綺麗に塗ることができるので初心者から上級者まで広く用いられています。
仕上がりも美しく失敗した時のリカバリーにも対応しているので様々な物品の塗装に使われています。
少ない吹付け回数で塗膜を作れる
エナメル塗料は定着力が高く塗装面への食い付きに優れます。下地の状態を隠す隠蔽力にも優れるので少ない吹き付け回数できれいな塗膜を作れます。薄い塗膜でも塗料のムラが発生しにくく、広い塗装面を均一に美しく仕上げることが可能です。
少ない吹付け回数で塗膜を作れるので作業工程の省力化が実現します。さらに複雑な形状の物品に対しても綺麗に仕上げられるので角のある物体やリベット打ちの跡隠しなどにも効果的です。
筆ムラができにくい
エナメル塗料は伸びがよく筆ムラができにくいのも大きな特徴です。筆や刷毛を使って塗装しても筆の跡がつきにくく筆ムラなく均一に塗ることができます。工業用の塗装ではエアブラシなどの吹付け処理が一般的ですが家庭での作業やホビー用途での筆塗装でも美しく仕上げられます。
塗料が固形化してしまうと再利用ができないので筆や刷毛を使って塗装する場合は必要量だけを容器に移し塗料感にはすぐフタをして空気に触れないようにしてください。
発色がきれい
エナメル塗料は空気と反応して塗装膜を形成します。表面は艷やかでキレイに発色市とても美しく仕上がります。
塗料そのものが反応しているので下地が透けにくくどんな場所に塗布しても塗料本来の持つ色がキレイに発色します。塗りムラができにくいので発色も均一に仕上がります。塗り方や下地による色の違いがほとんどないので異なる下地材を均一な発色で仕上げたいときにエナメル塗料はピッタリです。
塗装した後でもエナメル溶剤で色を落とせる
エナメル塗料は塗装した後でもエナメル溶剤を使えば色を落とすことができます。
エナメル塗料は一度乾燥してしまうと強い定着力を発揮し耐久性にも優れますがシンナーなどのエナメル溶剤には反応するのでキレイに落とせます。
塗り直したいときなどはエナメル溶剤でキレイに落としてから塗り直せば全く問題ありません。ただし、下地座によってはエナメル溶剤に反応して溶けたりする可能性があります。特にプラスチックはエナメル溶剤に弱いので塗装を落とすときは注意してください。
エナメル塗料のメリット
エナメル塗料にはさまざまなメリットがあります。メリットを活用することでエナメル塗料の活躍の場さらに広がります。
エナメル塗料の特徴とメリットをきちんと理解して上手に使いましょう。
プラモデルなどの細かな塗装にも使える
エナメル塗料はプラモデルなどの細かい作業が必要な塗装にも使えます。
塗料の伸びが良く少量でもしっかり定着するエナメル塗料は最小限の量でもキレイに発色します。プラモデルのような細かい部品は塗料をたっぷり付けてしまうとディティールが隠れてしまいます。
プラスチックにもしっかりと定着し筆塗りにも強いエナメル塗料を使えば最小量でキレイに塗れるので作業がしやすく、プラモデルの良さをしっかり引き出せます。
塗料の結びつきが良い
エナメル塗料は塗料の結びつきが良いので下地にしっかり定着します。一度塗膜が形成されると優れた耐久力を発揮し高い表面保護力が期待できます。
塗料の結びつきがいいので塗装前の下地処理もほとんど必要ありません。一部の素材を除いて下地処理なしでも特設層が可能です。途中で作業を中断してから再開しても結びつきの良さから塗りムラが目立ちにくく広い面を分割して作業しても均一に仕上がります。
塗料が乾く前なら拭き取ることができる
乾燥すると強い定着力を発揮するエナメル塗料ですが塗料が乾く前なら拭き取ることができます。塗装作業中に間違って塗ってしまったときも乾く前なら素早く拭きとって修正できますし、飛び散った塗料も簡単に、きれいに拭き取ることができます。
乾燥してしまうとエナメル溶剤で溶かさないと落ちないので乾く前にすみやかに処理しましょう。
下地がラッカーや水性の場合上から塗装できる
エナメル塗料は重ね塗りに強く、下地がラッカーや水性の場合特別な下地処理をすることなくそのまま上から塗装できます。下地がラッカーや水性なら定着力にも影響はありません。エナメル塗料本来の定着力を発揮して強い塗装膜を形成します。
ラッカーや水性の上からエナメル塗料を塗ることはできますが逆は不可能です。エナメル塗料の上にラッカーや水性塗料を塗るとうまく定着せずまだら状になります。エナメル塗料同士の重ね塗りは問題ありません。
エナメル塗料のデメリット
扱いやすく耐久性にも優れるエナメル塗料ですがデメリットも存在します。デメリットを考えずにエナメル塗料を使ってしまうとうまく塗れないだけでなく物品を痛めてしまう可能性があるので注意が必要です。
デメリットをきちんと理解しておけば過剰にデメリットを警戒する必要はありません。何がよくて何がダメなのかを知りエナメル塗料を正しく使いましょう。
プラスチックの耐久性を落とす
エナメル塗料には石油系の物品にダメージを与えるというデメリットがあります。特にプラスチックは耐久性を落としてしまうので注意が必要です。
プラモデルにも広く使用されているエナメル塗料ですが用法用量を守って正しく使ってもわずかながら耐久性は落ちてしまいます。何度も重ね塗りをするとプラスチックの耐久性に強く影響します。可動部など強い力がかかる部分の塗装にエナメル塗料を用いるときは注意してください。
塗膜の耐久性が低い
エナメル塗料は強い定着力を発揮し美しく仕上がりますが塗膜の耐久性は低めです。
建築用など屋外での使用を想定したエナメル塗料には十分な耐久性が保証されているもののラッカー系や水性塗料と比較すると耐久性は劣ります。
特に湿度と気温の影響を受けやすく、高温多湿の環境に長期間さらされ続けると塗膜が剥がれたりひび割れたりするお祖れがあります。
乾燥が遅い
空気と反応して市塗装膜を形成するエナメル塗料は塗布した塗料が全て乾燥するまでに時間がかかります。ラッカー系塗料なら数時間で乾燥するところがつや有りのエナメル塗料だと溶剤が全て揮発するまでに最低でも半日以上の時間がかかります。
表面が乾燥しても中が乾いていないことも多いので注意が必要です。乾燥前にうっかり触らないように十分な乾燥時間を確保してください。
一度個体化してしまうと再利用不可
エナメル塗料は一度固体化してしまうと再利用できません。
エナメル塗料は乾燥し固体化すると強い定着力を発揮します。塗装膜としては理想的に固体化するのですが使用前の塗料は取り扱いに注意が必要です。塗料缶の中で空気に反応して固体化してしまう二度と使えなくなります。
必要量だけを塗料皿などの容器取り出して使用し塗料缶にはすぐにフタをして空気に触れないようにしてください。
他社ブランド製品との混合はできない
エナメル塗料は他社ブランド製品との混合はできません。
同じエナメル塗料でも、ブランドごとに成分や製法は異なります。エナメル塗料は僅かな成分の違いでも性質が大きく異なるため他社ブランド製品との混合はしないでください。ムリに混合して使うとキレイに仕上がらないだけでなく定着せずにぼろぼろと剥がれ落ちてしまいます。
エナメル塗料を使用する際の注意点
安全性の高いエナメル塗料ですが、扱う際には注意が必要な点もあります。安全であっても塗料は化学物質です。不用意に使うと取り返しの付かない事態になりかねません。常に緊張感を持って慎重に使用しましょう。
完全に乾燥するまで触らないこと
エナメル塗料は完全に乾燥するまで絶対に触ってはいけません。
表面が固形化しつややかに仕上がるのがエナメル塗料の特徴ですが、空気に触れやすい表面は乾燥しても内側はまだ生乾きというのはよくあることです。
製品に記載されている乾燥時間より前にさわるとせっかくのきれいな仕上がりも台無しになってしまいます。確かめたい気持ちをグッと抑えて感想まで待ちましょう。
補助的な塗装の役割を果たす塗料として考える
エナメル塗料は、補助的な塗装の役割を果たす塗料として考えましょう。
エナメル塗料は美しい仕上がりが最大の特徴です。塗装面の保護や耐久性などは高くなく保護目的の塗料としては不向きです。
あくまでも美しい仕上がりをめざす見た目重視の補助的な使い方をするのが正解です。耐久力や保護力を期待するならラッカー系や水性系の塗料で仕上げたりそれらの塗料とエナメル塗料との重ね塗りをするなどしてください。
プラスチックを溶かしてしまう場合がある
エナメル塗料はプラスチックを溶かしてしまう場合があります。
エナメル塗料にはプラスチックを溶かす溶剤に近い成分が含まれています。少量なら問題ありませんがたくさん塗ったり重ね塗りをするとプラスチックが溶けてしまう恐れがあります。
特に部品の小さいプラモデルを塗るときは注意が必要です。完全には溶けなくても変形したり耐久性が落ちる可能性があるので十分に注意して塗装しましょう。